レースにおけるリスク管理

私たちは日々の生活において、いろいろな「リスク」に囲まれて生きています。
ちょっとした注意を払うことやルールを守ることである程度の安全を確保しているのです。
それでも、アクシデントは不注意や不可抗力といったあらゆる要素が加わることで発生します。

さて、アウトドアスポーツはどうでしょうか。
気象、地形、地理的要素、野生生物など、自然と対峙するとコントロールできないものの大きさから人間の力の小ささを思い知らされます。
そのような環境で活動することにおいては、日常生活とは全く違ったリスクと向き合う必要があります。

いかなる状況においても決してリスクをゼロにすることはできません。
私たちはその環境の中で最も安全度が高いと思われている方法を選択しているに過ぎず、 同時に、意識するしないに関わらず「安全の不完全性」、すなわち「リスク」をも選択して行動しているのです。
その中でリスクをゼロにする方法はただ一つ、「機会を放棄すること」です。

誰も事故が発生することを望んではいません。
もちろん、「大会をやらない」という選択肢も用意されていました。
大会を開催すること自体、自己満足やエゴなのかもしれません。
しかし、大会を通じて得られた貴重な経験を他のカヌー乗りにも味わってもらいたいという気持ちは強く、 発起人は大会を開催するためにどのようなリスクがあるのか、いかにリスクを小さくするか、 どう対処すれば発生した状況を最小限に留められるのか、そのために参加者の皆さんに何を求めるのか、といったことを協議しました。

レスキュー体制、コース(関門)設定、情報の提供、連絡体制、保険加入、等々。
私たち実行委員会は主催者の責任としてできる限りの努力をすることを約束します。
しかし、大会中においてスタッフが皆さんをずっとフォローし続けることはできません。
皆さんに認識してもらいたいのは、「大会だから全てのリスクが除去された状態で釧路川を漕げる」のではなく、 「参加者一人ひとりが危険性を理解し、単独で釧路川を漕ぎ下ることができるという前提で出場を受け付けている」ということです。
「自らの意志で参加する」ことを選択するということは、同時にそれに対するリスクを受け入れていただくことにもなります。

参加資格にセルフレスキューができることという要件があります。
いざというときは、自分自身だけでなくチームメート、他のチームもレスキューする場面もあるかもしれません。
レスキューに関してこのような言葉があります。
「Best rescue is "NO rescue"(最高の救助は「救助活動が要請されないこと」)」。
リスクをゼロに近づける術は参加者も有しています。
川に出る前に自分の身を守るための「Best rescue」は可能なのです。
他人任せにせず、自ら技術の向上や情報収集に努め、装備を充実させてオンサイトでの判断力を身に着けていくことは、 大会のみならず今後のアウトドア活動の中でも貴重な資産となるでしょう。
釧路川100kmカヌーマラソンは参加者が「お客さん」ではなく「共に大会を作る存在」であるという意識を持って参加することで初めて成立すると大会だということを念頭にご参加ください。

それでも、予期せぬことは発生します。
発生しない前提に立って川へ出てはならないのです。
「メシと命は自分持ち」
最終的には先輩パドラーが語り継いできたこの言葉に還りつくのかもしれません。

カヌーを始めとしたアウトドアスポーツが、身勝手で迷惑な存在ではなく、 人生を通じて長く楽しめる趣味として存在できる環境を作るために必要なのは、我々一人ひとりの責任ある行動だと考えます。

2015年3月 釧路川100kmカヌーマラソン実行委員会

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